名のない足跡
「…全く、本当にルチルはライトが好きだな」
「!? …なッ!!」
あたしが顔を真っ赤にすると、兄様はニヤニヤと笑った。
「やっと自覚したんだな。昔からべったりだったもんなー」
「うっ、うるさいわねっ!兄様だって、ルーカのこと好きなくせにッ!!」
あたしが言い返すと、兄様はものすごく慌て始めた。
「おまっ…!? …呆れた。人のことは鋭いんだなぁ」
兄様はため息をついて、苦笑した。
しばらくふざけあった後、兄様は席を立って、呟いた。
「…よし。そろそろ行くか」
「うん。…作戦実行ね」
あたしは、右の手のひらを、強く握りしめた。
もうこの手のひらから、何もこぼれ落ちませんように…