名のない足跡
2.オルゴール
兄様の作戦を成功させるには、まず演技力が必要だった。
少しでも誰かに怪しまれたら、そこでアウト。
演技なんてしたこともないあたしには、何とも難しい課題。
でも、この先のいろんな人の未来がかかってるんだもの。
やってやろーじゃぁないの!!
気合いを入れたあたしは、兄様と目配せし合う。
執務室から出たあたしは、すぐに伝令部に伝言を頼み、各部の長、副長+アゲートさん、ウィンに会議室に集まってもらった。
そして今から、作戦が始まる。
「皆様、集まって下さりありがとうございます。…実は先ほど、兄・ラッドから、ある真実を聞きました」
あたしは神妙な面もちで、静かに話し始める。
これは、緊迫感をもたせるための演技。
実際、部屋にいた誰もが(兄様とあたし以外)、ごくりと喉を鳴らした。
うん、なかなかやるじゃない。あたし。