名のない足跡
「兄様によりますと、この…フォーサス国には、"秘密の兵器"があるらしいんです」
「"秘密の兵器"…?そんなものが、この国に!?」
アゲートさんの反応に、室内に動揺が広まっていくのが伝わってくる。
あたしは頷き、その兵器の威力、そしてその兵器は、二つの条件、王冠と呪文がそろったときに発動する、ということを説明した。
「…じゃあ、やっぱ前国王は…」
「ええ。父様は、この二つを知ってしまったのよ」
沈黙を破って呟かれたウィンの言葉を、あたしは受け継ぐ。
「あたしはまだ、一つの条件しか知りません。でも、二つめの呪文という条件が、地下にあるとわかってしまった以上…何か処置をとらなければ」
「でもさ、いーの?」
アズロの言葉に、あたしはえ?と聞き返すと、アズロはため息まじりに言った。
「そんな重要なこと、オレらに言っちゃってさ。この中の誰かが、それを悪用しないかなんてわかんないじゃん?」