名のない足跡
「さあっ!ルチル様、朝食を済ませましたら、とびっきり可愛らしくしてさしあげますからね!!」
気合い十分!という感じで、ミカは腕まくりをするから、あたしは笑った。
「ありがと!…ミカはいないの?好きな人」
すると、ミカの顔がすごい勢いで赤く染まった。
ありゃ。
いるんだ!!
「えっ、誰?誰?」
あたしが興味津々でそう聞くと、真っ赤な顔をしてうつむいたまま、ミカは答えた。
「………………ウィン様」
!?
あたしはきっと、今ものすごい顔をしてると思う。
動かない口を必死で動かし、ミカに問いかける。
…ってゆーか、問い詰める。
「ミ、ミカ、本気で!? 本気であのウィンが!? どこ!? どこが!?」
なんとも失礼な言い方だけど、驚いちゃったものはしょうがない(と思う)。
「…時々、すれ違ったりするのですけど…きちんと挨拶して下さったり、階段から落ちそうになった時に助けていただいて、お優しいなぁ、と…」
頬を染めながら話すミカが可愛くて、あたしは思わず頷いてしまう。