名のない足跡
†††
俺は姫様の手をしっかりと握り、大広間へ入った。
とたんに、暖かい空気が、俺と姫様を包む。
演奏が始まり、曲に合わせて、みんなが踊り出す。
俺と姫様は、大広間の中央で踊った。
姫様はあまり踊りに慣れていないのか、時々バランスを崩したり、俺の足を踏んでしまったりする。
そのたびに恥ずかしそうにうつむいて、小さく謝る姫様が可愛くて。
このまま時が止まってしまえばいいのに、と本気でそう思った。
踊りも終盤にさしかかった時、どこからか、爆発音が鳴り響いた。
…この時俺は、改めて気づいた。
歯車は、もうとっくに回り始めていたことに。
そして
その歯車は
俺の力ではどうにもならないということに…