名のない足跡
不意に、肩を叩かれて振り返ると、モルファとルーカがいた。
「心配すんな、ルチル。ラッドは俺たちが護るからよ!!」
「ルチルは、自分の心配してなさい?」
二人はそう言って微笑むと、兄様を追って姿を消した。
あたしは、二人の姿が見えなくなってから、ライトに問いかけた。
「…ライト、ついてきてくれる?」
「…姫様?一体どこに行くんですか?」
驚くライトの腕を引っ張って、あたしは大広間から出ようと試みる。
「いーから、いーからっ」
「よくないって」
あたしの前に立ちふさがったのは、アズロだった。
珍しく真剣な顔をして、あたしを見る。
「君さぁ、何考えてんの?ウィリー王は、君のこと狙ってんだよ?」
「…わかってるわよ?心配してくれてありがと、アズロ。でも…」
「いーや、わかってないね。わかってたら、ここで大人しくしてるべきだし」
あたしの言葉を途中で遮り、アズロは首を横に振る。