名のない足跡
2.これが初めの第一歩
これは夢だ。
あたしはそう思った。
夢に違いない。
あたしが目覚めた時、事は早急に進んでいた。
目覚めるとすぐに、アゲートさんが寝室に入ってきて、早々と告げ始めた。
政治についていろいろ学ばねばなりませぬ!
とか。
安心して下さい、優秀な臣下はたくさんおりますぞ!
…とか。
そもそも、一番あたしに打撃を与えたのは最初の一言で、
「ルチル様は明日、正式な国王になられますぞ!!」
…というものであった。
その瞬間、あたしはピシッと石のように固まってしまい、その後アゲートさんが顔をほころばせ、嬉しそうに話す政治云々は、ほとんど右耳から左耳へ流れていった。
アゲートさんは最後に、「素敵な国王様になられますよう!!」と一礼して、さわやかに去って行った。
アゲートさんが去って行った扉を、口を半開きにしてじっと見ていたあたしに、側にいたライトは、あたしが気絶した後の事をかいつまんで話してくれた。
「夢なら覚めて―――!!」
苦笑しているライトを横目に、あたしはこんがらがった頭をどうしようも出来ずに、大声で叫ぶ。
その叫び声は、すぐにうめき声に変わった。