名のない足跡
「隊長も言ってやってよ。自分から危険に突っ込むな、って」
あたしが振り返ると、ライトは複雑な表情で、あたしを見返した。
「…姫様。俺は…アズロと同意見です」
「………そう」
あたしは、つかんでいたライトの腕を放した。
「二人してそー言うんだったら、仕方ないわね」
あたしはため息をついた後、にやっと笑う。
アズロがたじろいだ。
「…なーんか、イヤな予感…」
「姫様?まさか…」
冷や汗を流す二人を交互に見てから、あたしはしれっと言い放った。
「あたし一人で行きます」
スタスタと歩き始めたあたしの腕を、アズロがつかむ。
「ちょっ、マジ何考えてんの!? 尚更ダメに決まってんじゃん!」
「はーなーしーてーッ!!」
「放すかっ!!」
あたしは前に、アズロは後ろへと引っ張り合っていると、ライトがアズロに言った。
「…放してあげて下さい、アズロ。俺がついて行きますから」
「は!?」