名のない足跡

真っ直ぐな瞳を向けるアズロに、あたしが反論出来ないでいると、ライトがあたしの腕を引っ張った。


「…行きましょう、姫様」


そのライトの声をきっかけに、敵が一斉に襲いかかって来た。


アズロはその場で身をかがめると、次々に相手の懐に飛び込み、一撃を食らわしていく。


あたしは、地下へ降りる前にアズロを振り返って、迷った末、叫んだ。



「アズロの代わりなんて…いないからね!!」



微かに、アズロが笑ってくれた気がした。


階段を駆け下りながらも、あたしの胸は不安でいっぱいだった。


「大丈夫です」


そんなあたしに、ライトは優しく言った。


「アズロは、強いですよ。俺が保証します」


「…うん。信じるよ」


地下へ下り、宝庫の前で立ち止まる。


番号を入力し、扉を開けた。



黄金色に輝く部屋の中央にある箱の中から、あたしは王冠を取り出した。


宝庫の扉を閉め、再び鍵をかける。


「…よしっ、次!」





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