名のない足跡
あたしは声を張り上げて、ライトの言葉を遮った。
ライトが心配そうな顔をする。
「姫様?」
あたしが、ウィリー王に狙われているのは、事実。
そして、王冠と呪文…秘密の兵器を発動させる鍵が狙われているのも事実。
…あたしの周りに、ウィリー王の臣下が紛れ込んでいることも。
だとしたら必ず、この騒ぎを利用して、あたしに近づいて来るはず。
ここにいれば、きっと現れる…。
「…姫様!」
ライトに呼ばれ、我に返ったあたしは、平静を保つ。
「…ごめん、ライト。でもあたしは、どうしても…」
「姫様」
もう一度名前を呼ばれたあたしは、その返事をする前に、ライトに抱きしめられた。
「………、え?」
突然の出来事に、あたしの頭は大パニック。
耳元で、ライトの声が聞こえる。
「姫様に、考えがあるのはわかります。でも…焦っているままでは、良い結果は出ません。…まずは、落ち着いて下さい」