名のない足跡

ゆっくりと、あたしとライトの体が離れる。


「急がば回れ、って言うでしょう?」


そう笑顔で言われた言葉に、あたしは笑った。


「ありがと、ライト…。うん、あたし、一回執務室戻って、記録するもの持ってくるわ」


「はい。戻りましょう」


あたしとライトは、来た道を引き返した。


恐る恐る階段を踏みしめ、アズロと別れた場所まで戻る。


「ア…ズロ…?」


そこに、アズロの姿はなかった。


それどころか、敵も、衛兵もいない。


不安に襲われ、足元がぐらつく。


「姫様!」


ライトが叫んで、指さした方向を、あたしは見た。


壁に、紙が張り付けてあった。


あたしは急いでその紙を手に取り、書かれている文字を読む。



"心配、無用ー。城中の敵サン、排除してから探すから"



読んだ瞬間、安堵のため息がこぼれる。


これは、アズロの字。



よかった。

無事だったんだ―…。






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