名のない足跡
4.暗闇の中の真実
あなたが いたから。
あなたがいたから笑えた。
あなたがいたから泣けた。
あなたがいたから頑張れた。
あなたがいなかったら
きっとあたしは ここにいない。
なのに…
「……ライト?」
今、あたしの目の前にいるのは…誰?
「何ですか?今更、王冠を返せ、とでも?」
「………」
口調は、変わらない。
でも、突き刺すような鋭い眼差し。
知らない。
こんな冷たい瞳を…
あたしは、知らない。
「あなたは…誰?」
そのまま口をついて出た言葉を聞いて、ライトはその瞳を細めた。
「俺ですか?ライトですよ。ライト=ディアン」
「…嘘」
「嘘じゃありません。ただ…肩書きはまだ、言ってませんね」
「肩…書き?」
虚ろな目で、ライトを見る。
体の震えが、おさまることはない。
そうです、と言って、ライトは窓へ歩み寄り、こっちを振り返った。
暗い闇と、ライトが重なる。
「ウェルス国第二王子…ライト=ディアン」