名のない足跡
その後、何度も会議を開き、今後について話し合った。
前にデュモル隊長に言われていた、入部体制の見直しについてを始めとして、他国との貿易を介しての、新技術の導入などを検討した。
そうそう、アルファとジークにお礼を言いに行った。
二人は笑って気にするな、と言ってくれて、嬉しかった。
兄様の提案で、新たに魔術部を設けることになった。
あたしは、ロズに最初にお願いをすると、快く長になってくれた。
いざというときに、城に結界を張れる術師がいたほうが、心強いから。
気づけば、フォーサス国は春を迎えていた。
あたしが王になってから、もう一年が経ったんだ。
城の修復作業が終われば、あたしは正式な王になる。
国中のみんなが、認めてくれたから。
―――あたしはこの国を、この手で護りたい。
城内の様子を見て回っていたあたしは、ふとバルコニーに出た。
少しずつ咲き始めた桜が、カルム城を優しく包み込む。
澄み切った青空を仰いで、あたしはそっと目を瞑った。