名のない足跡
「兄様はね…魔術師の資格、持ってるの」
兄様が生まれてすぐ、その魔力の強さを見抜いた父様は、兄様にあらゆる魔術を叩き込んだ。
そして、最年少で魔術認定試験に合格。
"真の魔術師"と謳われたほど。
兄様が召還術を会得したのは、兄様が失踪する一年前。
このことは、父様とあたし、それから護衛のモルファとルーカしか知らなかった。
多くの人が驚きを隠せない中、ロナは静かに話し始めた。
『皆様に、ご報告致します。先程、ウェルス国では、第二王子ライト様の存在が国民に明かされました』
あたしは、誰にも見つからないように、唇を噛みしめた。
『多少、批判や混乱は生じておりますが、ウィリー王が上手く指揮をとり、最小限に留めております』
「ロナ、ウィリーは兵器のことを知ったか?」
兄様の問いかけに、ロナは小さく頷く。
『ライト様が、事細かにご報告されていました。けれど、ウィリー王が納得されたかどうかは、ご様子から判断は出来ませんでした』
「…そうか。ありがとうロナ」