名のない足跡
「今思えば、私たちはアラゴ様に相当失礼な事をしたな」
「…二人して『ぎゃー化け物ー!!』だものな」
声をかけてきたのは、アラゴだった。
当時、アラゴは二十二歳、第一王子の立場で、次期王に相応しくなるべく、国の環境を見直していた。
たまたま目を付けたのが"魔の樹海"で、アラゴは単純に、国にそのような不吉な呼び名がつくものがあるのは納得いかない!と原因を探りに来たのだった。
そこで、アラゴは二人のボロボロの子供を発見した。
こんな所にいた理由を聞き、きつく叱りつけた後、しっかりと二人を家まで送り届けた。
二人の子供の瞳には、アラゴが救世主として映っていた。
「アラゴ様が王子という事を知って、毎日お礼に行ったな。…門番には呆れられていたが」
「将来はこの方に仕えたいと、本気で私は思ったぞ。あの日アラゴ様に出会わなければ、今の私たちはここにはいないからな」
「…そうだな。私の声に普通に対応出来たのも、お前以外ではアラゴ様が初めてだったから、嬉しかった」