名のない足跡

純粋な子供二人は、アラゴを心から尊敬し、信頼した。


だから、彼が紹介した友達も、すぐに受け入れた。


「…印象的だったな、あの真っ赤な髪は」


「ああ。事もあろうに、あの時の私は、あの髪を綺麗とか言ったんだぞ!戻れるものなら、気持ち悪いと言ってやりたい気分だ」


「…もし言ってたら、ものすごい未来になってたかもしれないぞ?」


カーネは少し黙った末、そうかもな、と笑って答えた。


本当にあの頃は、疑うことすら知らなかった。


ただ、毎日話して、笑って。



年は離れてさえいても、気づけば四人はよく一緒にいた。


けれどウィリーは、ある日忽然と姿を消した。


それはアラゴが王位に就き、メノウとカーネがアラゴの臣下になって、数ヶ月後の出来事だった。



元々ウィリーは、自分の家のことを話したがらなかった。


だから三人は、ウィリーの住む場所を知らずにいた。


けれどある形で、三人はそれを知ることになるとは、思いもしなかった。





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