名のない足跡

「で?」


ウィンに先を促され、話遮ったの補佐くんなんだけど、とか思いつつも、アズロは答えた。



「好きだよね、姫サマのこと」



ウィンは大きく目を見張り、アズロを指さす。


「……おまっ…!?」


上手く舌が回らないらしく、急にうろたえ始めたウィンを、アズロは珍しげに眺めた。


「あ、やっぱり?そんな感じした」


そんな感じってどんな感じだよ!!


…とアズロに問いただしそうになる自分を、ウィンは必死で抑えた。


「…で?何が言いたいんだ?叶わないよ、とでも言いてぇのか?」


アズロは中央のルチルに目をやり、首を横に振る。


「…いや、オレもーって思って」


「………は!?」


何てことだ。


こんなとこに思わぬ敵が。


「まっさか、姫サマ好きになっちゃうなんてねー。笑えねー」


と言いつつ、無理して笑うアズロを、ウィンは少しだけ羨ましく思った。


そこまで割り切れるほど、自分は強くなかった。



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