名のない足跡

「…アイツの好きなヤツ、知ってるか?」


「え?隊長…じゃなくて、元隊長でしょ?バレバレじゃん」


「そ。あの反逆者。…勝てっと思うか?」


投げやりな言葉と共に、吐き出されたため息。


けれど、そのすぐ後にウィンが見せた笑みを見て、アズロもまた笑った。


「…ははっ、思わない!」


「不毛なもんだな、互いに。俺はさ、アイツが正しいことしたなんて、これっぽっちも思わねぇ。ただ…アイツはいつも、一人の女を護る為だけに動いてた」


「…そーだね」


「それが逆に、すげぇなって思ったよ。…なのにあんにゃろ、中途半端にいなくなりやがって」


ふつふつと沸き上がる怒りを隣から感じたアズロは、数歩反対側に避けてから口を開いた。


「ホント、中途半端だよね。納得いかない。あーんなイイコ置き去りにしちゃってさ」


「…いい子っつーか、お人好しだな。俺がアイツとアズロの会話で、アイツがウェルスの人間だって知ったのに黙ってたこと詫びたら、あのお人好し、なんつったと思う?」




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