名のない足跡
「…じょ、冗談だって。ホラ、花びらは…へ、部屋に飾ろうかな~?と。戦闘部には花が足んねぇからな~」
あっはっはと笑って誤魔化そうとするデュモルを、セドニーは一言で突き放した。
「花を買う金もないのかお前は」
「うぐっ…!」
金がないはずはなかった。
各部の長は、かなりの報酬が貰える。
…ということは。
「…何に金を充ててるんだ?」
「………さ、酒…」
ぼそっと呟くデュモルに、セドニーはくわっと目を見開く。
「酒だと!? …お前、もっとマシな使い方が出来んのか!!」
「うるせぇッ!! 酒は男の一生に欠かせねぇんだよ!!」
「そんな文無しになるほど酒に金を使うなど、アホなお前にしか出来んわ!!」
「あ…アホだとぉ!? お前だけには言われたくねぇー!!」
途中から幼稚な悪口合戦になりながらも、息が切れ切れになるころには、キラの眠る墓石の前に到着していた。
流石に二人共口論を止め、セドニーは花束をそっと手向ける(ついでにデュモルをキッと睨んだ)。