名のない足跡

「…小娘」


「うぁっ!?はいッ」


急に名指し(?)され、声が裏返ってしまう。


「…貴様のような無鉄砲な女を、私は知っている。…ハウラだ」


…ハウラ。


あたしは、誰だか知ってる。


…母様の名前。


「…っ、母様の…お知り合い…!?」


あたしだけじゃなく、ライトも驚いている。


ウィリー王は小さく頷いた。


「…貴様の父、アラゴとは…親友だった。アラゴの許嫁として、私はハウラと知り合った」


父様とウィリー王が親友!?


あまりに突然の事実に、あたしは耳を疑った。


「しっ…親友だったんなら、何で父様を殺そうとしたの!?」


「…私の間違えた愛の結果だ」


間違えた…愛?


よくわからなくて、あたしは困ったように眉を下げる。



ウィリー王は、瞳を伏せ、記憶を手繰り寄せるように、静かに話し始めた。


「…私は、ウェルス国第一王子の立場の時から、権力に固執していた。自らが王になった時は、私が世界の権力を握ろうと考えていた」




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