名のない足跡
「…ハウラはアラゴの許嫁だった。二人は既に愛し合っていた。…その事が、私の心に再び闇を創った」
「…諦められなかったのですね」
ポツリと呟くライトを、ウィリー王は瞳を細めて見た。
「…そうだ。私はハウラをどうにかして自分のものにしたかった。手に入れたかった。…私は友を裏切った」
小さく、最後の言葉が大広間に木霊した。
「…私は、アラゴに自分がウェルスの人間だということを、言えずにいた。しかし、ハウラを手に入れたかった為に、何も言わずにアラゴの前から姿を消し、私は王に就任した」
隣で、ライトが顔を伏せた。
父親の突然の告白に、きっと一番戸惑ってるのはライトだ。
「…アラゴから、兵器の存在は聞いていた。私はその兵器を手に入れ、世界を自分のものにしたかった。そうすれば…ハウラも手に入ると、私は考えた」
「…そんなの間違ってる」
そのままの気持ちが、あたしの口をついて出た。
あたしは、ウィリー王をしっかりと見据えた。