名のない足跡
「…あの日キラは、手紙を寄越した。国王に手をかけることは出来ない、と。私はキラを試した。臣下にわざと殺さぬ程度にキラを攻撃させた」
ライトは、ただ呆然と、明かされる事実を聞いていた。
「…キラは、私に反発すれば良かった。臣下を倒し、私に直接態度を示しに来れば良かった。そうすれば私は、勘当だと一言放ち、キラの好きにさせるつもりだった」
だが、とウィリー王は続ける。
「…キラもまた臣下相手に手を抜き、自ら死を選んだ」
あたしは、ライトの手をそっと握った。
ライトの手から、小刻みに震えが伝わる。
「…私は恐れたのだ、ライト。私の大切なものが、これ以上この掌から零れ落ちてしまう事を」
「…俺…、俺はっ…」
ひどく困惑するライトに、ウィリー王は軽く笑いかけた。
「…お前は、私と同じくらい浅はかだ。大切なものを自ら切り捨て、私の元へ戻って来た」
「…っ、それは…」
バツの悪そうな顔で、ライトは口ごもった。