名のない足跡

「…私に刃向かう度胸がない息子など、城にいて欲しくなどない。どこへでも行ってしまえ」


…なんてめちゃくちゃな。


そう思ったけど、逆に微笑ましかった。



不器用な、ウィリー王のライトへの親子愛。


きっと、"お前は自由に生きていい"って言いたいんだと思う。



ライトも察したのか、複雑な表情でウィリー王を見て、それからあたしを見る。


「………姫様」


あたしは微笑んだ。


ライトの考えてることが、あたしにはわかる。


「あたしのことは気にしないで、ライト」


「…ありがとうございます。俺は、フォーサスには戻りません」


アズロとウィリー王が、同時に振り返った。


「…ライト、何馬鹿な事を言っている」


「馬鹿なのは父上でしょう。俺がいなくなったら、父上はどうなさるんです。健康管理もろくに出来ないのに」


うっ、とウィリー王が喉を詰まらせる。


そこにすかさずライトが攻め込む。


「こっちが心配死にしますよ。今更父親ぶらないで下さい。第一、父上は感情表現が乏しすぎます」


ライト…厳しい。


ウィリー王は相当ダメージを受けてる様子。




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