名のない足跡
それでも、ライトは最初から、ウィリー王のことをちゃんと考えていた。
さらにあんな事実を打ち明けられたら、側を離れることなんて出来ないと思う。
…これが、ライト。
あたしの好きになったひと。
「もう一度…最初からやり直しましょう、父上。今度は、俺もついてますから」
「…ライト…済まない」
その光景を眺めていると、横からアズロが小声で話しかけてきた。
「……いーの?」
「…いいわよ?ライトが幸せなら、それでいい」
それっきり、アズロは何も聞いてこなかった。
ただ、あたしの頭を撫でてくれた。
本音を言うと、よくなかった。
我が儘だけど、一緒に帰って欲しかった。
…でも、そう頼み込んだら、ライトはきっと笑顔で頷く。
やっと繋がり始めた親子の絆を、あたしが断ち切ってしまうことなんて、出来ない。
「…ルチル女王」
「はい」
不意に、ウィリー王に声をかけられ、返事をする。
ウィリー王の瞳は、初めて会った時より、何倍も生き生きして見えた。