名のない足跡
「……姫様」
「え?」
心の中で葛藤していたあたしは、ライトに名前を呼ばれ、反射的に聞き返した。
だから、次のライトの言葉にも、すぐに反応出来なかった。
「俺だけの、姫君になって下さい」
………。
え?ちょっと待って。
言葉の意味が…。
「…やだ、ライト。プロポーズされたみたいじゃない!」
冗談でそう言って笑うと、ライトは笑わずに、あたしをその瞳でしっかりと捉えた。
「…みたいじゃなくて、プロポーズしたつもりなんですけど」
「………え?」
心臓が、激しく動き出す。
自分の耳が信じられなくて、目の前のライトは幻想なんじゃないかと、まばたきを繰り返す。
「俺は幻でも何でもないですよ」
あたしの心を見透かしたように、ライトが笑う。
「…だってっ…そんな…夢みたいなこと…」
急に恥ずかしくなって、目を伏せる。
だって…これって…
「両想い?」
考えてることが、うっかりと口をついて出た。
あたしは、慌てて口を塞ぐ。