名のない足跡
「ヒメサマ、ファイトー」
またかい。
っていうか、さっきより口調が堅くなってる気が…気のせい?
「あ、の。昨日は…」
「立ち話をする気か?中へ入ったらどうだ」
カーネ司令官は、スタスタとあたしたちの横を通り過ぎ、指令室の扉を開け、中へ入った。
あたしとライトは、その後に従い、扉を閉める。
あたしがもう一度仕切り直す前に、カーネ司令官が先に口を開いた。
「戴冠式当日にふらふらとほっつき歩いて、何をしておるのだ?賄賂か?」
ワイロ!?
さすがのあたしもカチーンときてしまった。
「…そんなんじゃありません。昨日のお礼を言ってまわることの、どこがいけないんですか」
「礼など言う前に、行動で示したらどうだ?鼻垂れ小娘が」
「はっ!? 鼻なんて垂れてません!!」
「ハッ。じゅくじゅくの未熟者だと言っておるのだハナタレ」
「じゅくじゅくでもハナタレでもなーいッ!!」
…何か話題がズレてきてるような!?
彼女のペースに巻き込まれてはいけない、と思い、冷静さを取り戻そうと努める。
「とっ、とにかく、昨日は…」
「礼などよいと言っておるだろうハナタレ」
…ハナタレ定着。