名のない足跡
セドニー長官におじぎはするものじゃない(ちょっと違うかも)と言われたことを思い出し、軽く会釈するだけにした。
やっぱりメノウ交易官は一言も発せず、何やら手元の羊皮紙に何かを書き、あたしに手渡した。
"出来る限りのことはする。心配するな"
…うわぁ、達筆。
とりあえず、軽くもう 一礼だけして、あたしはそそくさと部屋を出た。
部屋の外で待機していたライトが、あたしに訪ねた。
「あっ姫様。どうでした?話されました?」
「ううん。ダメ。でも達筆ってことが判明したわ」
ライト曰わく、「未来の王と二人きりなら何か話すかも!」ということだったんだけど、そう簡単には心を許してくれないらしい。
父様はいったいどうしてたのかな…。
「では、次の戦闘部で最後ですね」
「えっ?護衛部…ってライトだった」
「あはは、忘れないで下さいよ。きっと戦闘部の人たちは広場でしょうね。行ってみましょう」
ライトの予想通り、デュモル隊長たちは広場で訓練をしていた。
「おっ。姫さんじゃん。ライトも」
「こんにちは。デュモル隊長とユナ副隊長、少しよろしいですか?」