名のない足跡
デュモル隊長は楽しそうに、ユナ副隊長は不思議そうに頷いた。
「あぁ、どーぞ」
「僕もですか?」
昨日の謝罪とお礼を言うと、デュモル隊長は大きな声で笑いだした。
「やっぱ面白ぇなー、姫さん!言ったとおりだろ?ユナ」
ユナ副隊長も目を細めてフッと笑う。
ライトに次ぐ、メイドさん人気No.2のユナ副隊長、爽やかな笑顔!
「そうですね。少し安心しました」
ちくり、とあたしの胸が痛む。
やっぱり、あたしは誰からも信頼されているわけじゃない。
信頼に応えるんじゃなくて、信頼を増やしていかなくちゃいけないんだ。
それはきっと、とても大変なこと。
「心配すんなって、姫さん。この人、と決めたら、臣下は裏切ったりしねぇから」
あたしの表情を見たデュモル隊長が、かけてくれた言葉。
あたしが王になったらまずやるべきことが、わかった気がした。
「…ありがとうございました!!で はっ、失礼します!!」
「ちょっ…姫様!!」
意気込んで駆け足で去っていくあたしと、あたしを追いかけるライト。
「…やっぱ面白いな」
「大丈夫ですよきっと。ライトもいますしね」
その二つの影を見て呟かれた言葉は、あたしの耳には届かなかった。