名のない足跡
†††
「まぁっ、お綺麗です姫様!!」
「ありがと、ミカ」
あたしは、あのあと自分の部屋に戻った。
ミカを含む数人のメイドさんたちが、あたしの服や髪型を仕立ててくれた。
ドレスが着崩れないようにと、一時間半ほどずっと立ちっぱなし。
あたしは早く座りたくて仕方がなかった。
あたしがやっと座れるときは、戴冠式の始まりなんだけど…。
「う~…あと30分」
あたしは両手で顔を覆った。
もう、心臓がばくばくしててやばい。
「ルチル様、失礼します。そろそろ大広間の方へ…」
アゲートさんが部屋に入ってきて、あたしに告げた。
「もうほとんどの臣下たちは、大広間で待機しておられますよ」
「ア、アゲートさん、本番中倒れちゃったらどうすれば…」
「俺が支えてさしあげますよ」
アゲートさんの後ろから、ライトがひょっこりと顔を出す。
ミカ以外のメイドさんたちが、小声できゃーきゃー言ってるのが聞こえる。
「あぁ、ライトくん。姫様をお連れする役をお願いするよ。私はまだ準備があるから」
「わかりました。行きましょう、姫様」