名のない足跡
ミカたちの激励を受け、あたしはなんとか笑顔で対応して部屋を出た。
大広間までの一歩一歩が、やけに重たく感じられる。
あたしは、今すぐにでも引き返したい衝動に駆られた。
「…姫様?」
「うううう、うん?」
「…緊張しすぎじゃないですか。はい、吸ってー吐いてー」
不自然なあたしの返事に、ライトは呆れつつもアドバイスをくれた。
でも、深呼吸だけじゃこの緊張はおさまらない。
「ラララライト、どどどどうしよう」
「いつも通りになさって下さい。あ、もう少しおしとやかに」
「え。…それどういう意味?」
「あはは。スピーチの内容は考えました?」
うまく誤魔化されてしまった。
でも、問題はスピーチ。
「内容ね…アドリブでいこうと思うの」
おずおずと告げるあたしに、ライトは面食らったような顔をした。
「あーッ、やっぱり無謀よねっ!! わかってる!!」
「いえ、そんなことは…」
「ううん、あたしだってバカだと思う。…でも、やっぱり考えて作った言葉じゃなくて、ありのままのあたしと、あたしの言葉を伝えたくて」