名のない足跡
カルム城には美形兵士がたくさんいるけど、その中でもライトは(認めるの悔しいけど)、飛び抜けてかっこいい。
オマケに、性格良し、頭脳良し、と城内ではメイドさん達に大人気。
そんな全世界の女の子が憧れるような、理想の男性像が隣にいるのって、何か複雑…。
「って、ゆうかライト!何であたしの部屋にッ」
あたしはハッと気付き、さらに顔を赤らめてしまった。
そんなあたしに対しライトは、
「俺は姫様の護衛隊長ですから」
と、イマイチ答えになっていない返事を返す。
「だーからっ、そーゆーのじゃなくって…」
―――コン、コン
不意に、扉をノックする音が聞こえた。
あたしが「はい?」と言うと、扉の外から声がする。
「ルチル様?ミカでございます。お食事お持ちしました」
すると、ライトが扉まで近づき、鍵を外した。
カチャリ、と音がする。
…ん?鍵?
鍵までかけてたの、ライト…
あたしは顔をひきつらせながら、ライトを見る。
あたしの視線に気づいたライトは、静かにほほえむ。
いやいや、ほほえむトコじゃないでしょ!?