名のない足跡

3.出口のない迷路


あたしが大広間へ足を踏み入れた瞬間、大広間は水を打ったように静まり返った。


あたしは、母様の教えに従い、ひたすら前にある玉座だけを見据えて、出来る限り胸を張って歩く。


敷かれている赤い絨毯の上を歩きながら、見せ物になったような気分を味わった。



あたしが左右に分かれている席の間を通って玉座にたどり着くまで、ひそひそ声やじろじろとした視線は止まなかった。


ライトが数歩後ろからついて来てくれていることだけが、心の支えになった。



あたしが玉座までたどり着き、ゆっくりと腰掛けると、ライトはあたしの横につく。


あたしの目の前には、たくさんの人。


城内の人たちと、対峙する形となった。



玉座のある場所は、段が少し高く、ステージのようになっている。


そのステージの端にアゲートさんが立っていて、マイクを片手に話し始める。


「皆様、戴冠式を開会する前に、注意がございます。戴冠式の内容を国民に知ってもらう為、大広間内に小型マイクを設置しております。戴冠式でのスピーチ等は全て国内のスピーカーから放送されます。もし発言などをなさる際には、このことを考慮して発言して下さい。ご了承願います」





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