名のない足跡

…ライトが授与してくれるなんて、あたし聞いてなかったんだけど…。


けど勝負は、この後に控えている。


「それでは、新国王、ルチル様のスピーチです」


アゲートさんはマイクを持ってきて、あたしに渡してくれた。


「頑張って下さい」と小さく言われ、とにかくあたしは頷くことしか出来なかった。


たくさんの目が、あたしを見上げている。



震える手でマイクをしっかりと握り、渇ききった口を開き、あたしは話し始めた。


「…みなさんは、この国が好きですか?あたしは、大好きです。

あたしはこの国で生まれて、ずっと父の背中を見て育ちました。

あたしは父に、父の造り上げたこの国に、十七年間ずっと、護られてきたんです。

それは、とても幸せなことでした。父がいなくなった今、深く感じています。

父が残してきたものはとても多く、それは今でもこの国を護っています。
父が護ってきたこの国を、今度はあたしが護ることになりました。自分でもわかっていますが、そんな簡単に出来るものじゃありません。

それには、たくさんの助けが必要なんです」


「それはあんたが周りに任せっぱなしにするってことなのか?王はそれでいいのか!?」



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