名のない足跡
どこからか男の人の声が上がり、周りからそうだ、そうだと同意の声が次々と上がる。
絶対にどこかで何か言われると思ってたけど、意外と早かったなぁ、とあたしは思いながら、素直に自分の考えを話した。
「…こうは考えられませんか?
みなさんはきっと、あたしが国を動かすことを、多かれ少なかれ不安に思っているでしょう?
それなら、いっそ優秀な側近さんたちが政治を行ってくれた方が、みなさんには都合がいいと思いませんか?
いくらあたしが王だからといっても、まだまだ人生経験の浅いヒヨッコです。そんなあたしが考えた政策を、果たして取り入れてくれるでしょうか?
きっと、側近さんたちは取り入れてくれません。それはあたしよりも長く、父の側近として政治と向き合ってきたからです。
わざわざ国が衰えるかもしれない政策はしないでしょう。
それでもみなさんは、安心出来ませんか?
結局は、父の場合とあたしの場合の違いは、意見が通るか通らないかなんです。
…あたしがいなくても、国はきっとまわります。
それなら、あたしは何をすべきでしょう?
任せっぱなしになんてするつもりはありません。
あたしはあたしに出来ることが、きっとあるはずなんです。」