名のない足跡
「失礼しま―…ってうおぁ、ライトさんっ」
足を半歩室内へ踏み入れたところで、ミカは側に立っていたライトに驚いて立ち止まった。
「うおぁ、って。失礼だな」
ライトはへらっと笑った。
言葉に対し、本人は失礼されたとは思っていない様子。
こんな子供っぽい笑顔に、みんなやられるのよね―…。
でもミカは、その笑顔を見て顔を赤らめる様子もなく、いつも通り。
「すみませ―…って、ライトさん!何故姫様の部屋にッ」
逆に、怒って顔が赤くなった。
「姫様と同じ質問するんだなぁ」
悪びれる様子もなく、はは、とライトは笑う。
「いいの、ミカ。ライトはあたしの護衛隊長らしいから」
そう言いつつ、あたしは横目でライトを見る。
うんうん、と頷いているライトを見て、何だか可笑しくなったあたしは思わずほほえむ。
「らしいって…もしやライトさんは正式な護衛隊長ではないのですか!?」
…ええ!? 変なトコロに反応してる!?
思わずあたしはビックリ。可愛らしい思考回路だわ…
ミカはあたしより一つ下で、あたしの世話係。
食事、洗濯、掃除…まだ若いのに、家事全般を完璧にこなせるミカは、羨ましい。
絶対いいお嫁さんになれると思う。