名のない足跡
「どうですか?よろしければ、明日から募集を始めたいのですが」
「それって、一人を選ぶんですか?」
「ええ。二人以上いましても、意見が割れる等するだけなので」
「…アゲートさんは、もう補佐してくれないんですか?」
あたしのこの言葉に、アゲートさんは感激してしまったらしい。
「何という有り難きお言葉…!! しかし私は、新補佐にルチル様を一任し、影からこっそり見守りつつも、何かあればこっそりお助けしようと考えております!」
…こっそりじゃなくていいのに。
「あ、ありがとうございます。…ライトは?どう思う?」
話を振られたライトは、にっこりと笑って答えた。
「いいと思いますよ。救いの手が増えるんですから」
「…うん。そうよね。アゲートさん、お願いします」
アゲートさんは、早速手続きを、と言って執務室を後にした。
あたしは、ふぅ、と息を吐きながら、イスに腰掛け、ペンを手に取る。
「よしっ」
「…姫様?仕事ですか?」
ライトが側に寄ってきて、机の上の羊皮紙をのぞき込んだ。
まだ少ししか書かれていない文章に目を走らせ、ライトはあたしに聞いた。
「これは…?」