名のない足跡
と言っても、お嫁さんに行かれても困っちゃうんだけど。
だって、ミカは一番年が近くて話しやすい、友達のような存在だから。
「ルチル様っ、私、王様に直訴いたしますわっ」
「おいおい」
あたしがぽけっとそんなことを考えている間も、ミカの思考は暴走中だった。
「姫様、俺は正式な隊首式を行ったつもりなんですがね」
ライトが苦笑しつつこっちを見た。
どうにか止めて下さい、とでも言うように。
あたしは、今にも部屋を飛び出して行きそうなミカに優しく言った。
「ごめんね、あたしの言い方が紛らわしかったの」
「そっ、そんな姫様!! 私の勘違いがいけないのです!」
しゅん、とミカはうなだれてしまった。
オレンジ色の髪が顔にかかり、水色の瞳が曇る。
…やばいっ!!
焦るあたしをよそに、ライトはにこにこと言う。
「あぁ、姫様。ミカを泣かしてしまいましたね」
その瞬間、あたしとミカの中の何かの糸が切れ、同時に叫んだ。
「大体あんたがいけないんでしょうがッ!!!」