名のない足跡
「見ての通りよ?あたしにしか出来ない仕事。早く完成させたいの」
生き生きと話しながらペンを走らせるあたしを見て、ライトは少し考えるように目を伏せる。
「…姫様」
「ん?」
「俺にも何か出来ることあったら言って下さいね」
あたしは、つとペンを走らせるのを止め、笑った。
「…何言ってんの!これはあたし一人でやらなきゃ意味ないのよ?」
「…そうですか。残念。じゃあ…他のことで頼って下さいね」
つい最近まで、なんてあたしは不幸なんだって思ってた。
…でも全然、不幸なんかじゃなかった。
目の前の深く優しい碧色の瞳に、いつも護られてきたんだ。
「これからもずっとそばにいてね」
小さく呟いた言葉を聞いて、
彼は笑ってくれた。