名のない足跡
「…あっそ。あんたは大きい出口じゃなくて、小さい出口から目指すってわけか」
ウィンがまたため息をつくから、あたしは一瞬怯んでしまった。
「なっ、何よ。悪い?」
「別に。俺はついてくだけだって。それに、その進み方は嫌いじゃない」
ホッとしたあたしの肩を、ライトが優しくポンとたたく。
「それなら、早く行動に移した方がいいですね。時間は待ってくれませんから」
「そうねっ!早速メノウ交易官に会いに行きましょっ!!」
あたしはライトの腕を引っ張って執務室から出る。
後ろからウィンの「おいっ」て声が聞こえた。
「早くしないと置いてっちゃうよーっ」
「待てこらッ!!」
あたしたち三人は、どたばたと廊下を走った。
笑い声が廊下で木霊して、風に乗って窓の外へ流れていった。
でもね、
このときいくらあたしが頑張っていても。
運命の歯車を止めることは
出来なかったと思うの―――…