名のない足跡
ぞろぞろと集まり始めた戦闘部員たちを見て、デュモルはパン、と手を叩いて並ばせる。
そんなデュモルの瞳が一瞬曇ったことに、ユナは気がついた。
「俺は、アイツみたいになりたくない」
ほとんど自分自身に言い聞かせるように呟かれたその言葉は、しっかりとユナの耳に届いていた。
"アイツ"が誰を指しているのかも、その表情が陰る理由も、わからない。
ただユナは、聞こえなかったかのように振る舞った。
「え?何ですか?…隊長は、隊長がお似合いですよ」
その言葉に、デュモルはフッと笑っただけだった。
†††
「セドニー長官、これも借りていいですか?」
現在、あたしがいるのは書庫。
あたしが手にとった本を見て、セドニー長官は構いませんが、と言って続けた。
「…食生活など学んでどうなさるんです?」
「全てのことを学んでおきたいんです。…例え他国のことでも」
あの後。
あたしとライトとウィンは、メノウ交易官・カーネ司令官と話した後、各国へ手紙を出した。
この世界に、国はもちろんたくさんある。
でも、ほとんどが小国で、権力が大きい国は、この国、フォーサス国を含め、四ヶ国。