名のない足跡
「ロード!上司に向かってなんだその口のきき方はっ」
「あ~も~っ、後で謝りますってば!! 緊急収集かかってるんです!!」
セドニーはロードの言葉に眉根を寄せた。
―――緊急収集?
「それを早く言いたまえ!」
「はじめから言おうとしてましたでしょう!!」
その後もぎゃーぎゃーと言い争いを続けながら、二人は足早に書庫を立ち去った。
彼らが書庫を出た後、ふらりとそこへ立ち寄った文官は、あふれんばかりの本があちこちに無造作に広げられているのを見て、賊が入ったのかと本気で驚いた。
†††
同じ時刻、カルム城外の大きな広場では、衛兵たちの訓練が行われていた。
「構え!!」
ザッ、と縦横に並んでいる兵士たちが一斉に剣を構える。
その様子を、二人の若い指揮官が厳しく見守っていた。
そのうちの、深緑の短髪にバンダナを巻いている青年が、声を張り上げている。
「第一陣、前へ!!」
二十名ほどの兵士が、広場の中央へ出る。
次の「攻撃開始!!」の合図で、近くの相手とペアを組み、互いに斬り合い始める。