名のない足跡

「姫様、お疲れ様です」


「…ライトッ!」


ライトは、ひょいっとあたしの抱えていた手紙とファイルを取り上げる。


「これは俺がカーネ司令官に渡しておきます。姫様は休んでて下さい」


「ライト、それくらい大丈夫だからっ!ライトだって本当は寝てなー…」


あたしの言葉は、ライトの人差し指があたしの唇に触れることで途切れた。


「これくらいのことだから、俺がやるんです。姫様がやる必要はありません。第一、姫様が倒れたら元も子もないでしょう?休んで下さい、ね?」


最後の「ね?」の部分で、ライトはウィンクして、去って行ってしまった。


あたしはしばらくその場で悩んだ末、眠気に勝てないと思い、ウィンにも寝るように再度注意してから寝室へ戻った。


ふかふかのベッドに沈み込んだあたしは、一瞬のうちに深い眠りに誘われた。





†††


それから2ヶ月余りが経ち、返事が来たのは驚くことにウェルス国からだけ。


と言っても超短文で、



"戦う気はない。よって対談する気もない"



…という一文だけ。


あたしは手紙の内容に、よければ対談したい、と書いておいたんだけど、きっぱりと断られてしまった。





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