名のない足跡
「…何やってんだ、あんた」
声の主にすぐに気づき、あたしはラッキー!とばかりに顔を輝かせる。
「ウィンッ!!この本、すっごく重いの!!」
「…だから?」
何て気の利かないやつなの!?
あたしは怒鳴りたい衝動を必死に抑えた。
「…だからっ、手伝ってくださいっ」
「は?自分で何とかしろよ」
「………」
あたしは呆れて、物も言えなくなった。
ここは普通、
『大丈夫?俺が持つよ(爽やかな笑顔付き)』
とか言うものじゃないの!?
「ウィン、女性には優しくしないといけませんよ」
後ろから声が聞こえると同時に、あたしの抱えてきた本の山がふっと持ち上がる。
「ライトッ!!」
にっこりと笑ったライトが、この時は天使に見えた。
「はっ、女性ねぇ…」
対する悪魔の呟きに、あたしはついにキレる。
「うるっさいわね!!もうあんたには何も頼まないわよっ!!」
何故か、この言葉がウィンの気に障ったらしく、
「助かるな。俺はあんたの子守をする気なんかサラサラねぇし」
と言って、スタスタと去って行ってしまった。
「何なのよ、もう!行こっ、ライト」
ぷりぷりと怒るあたしに、ライトは少し考えてから話し出す。