名のない足跡
そこで、ウィンがすかさずため息。
絶対、幸せ逃がしすぎだと思う。
「あんた、この城から出たことねぇの?」
「あるわよっ失礼な!!…城下町までならねっ」
「…はー。じゃ、知らねぇわな」
何が?と言う目でウィンを見ると、説明してくれた。
「南の街ジェマに、魔法屋があるんだ。そこには超一流の魔術師がいて、そいつに頼めば好きな国へ一瞬で行ける」
…全然知らなかった。
「でもな、大抵のやつらは自力で行こうとするんだ。他国に」
「…へ?何で」
「金がめちゃかかる。それに魔術師がかなりの変人というウワサ」
ウィンが肩をすくめて言うので、あたしは思わずうっとのけぞった。
「ま、この際腹くくるしかねぇぞ。時間かけてらんねぇし」
「うん。…明日の早朝に発とう。ジェマなら馬車で三時間ぐらいよね」
次の日の早朝、アゲートさんに見送られ、あたしたちは城を出た。
近くで馬車に乗り込み、ジェマへと向かう。
「先に、どちらの国へ行くんですか?」
ライトの問いかけに、あたしはあくびをしてから答えた。
「ん、サヴァかな」
「何故です?」