キミの隣、笑顔のあなた
私はほとんど無意識だった。
黒板の前に立つと、目の前にある長い白のチョークを手に取り、黒板の上を走らせた。
『とおるにい。
あなたが、好き。』
ボーっと自分が書いた字を眺めた。
今までの澄にいとの思い出が、この文字とかぶさった。
・・・いつまでも見れる。そう思った。
ボーっと、自分の書いた文字を眺めていた。その時・・・
キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン——————
遠くから聞こえる鐘の音に気付き、はっと我に返ったのは鐘が鳴り終わりそうになっているときだった。
タッタッタッタッ——————
遠くから聞こえる上履きが歩く音に、急いで黒板の文字を消した。
跡が残らないように、何度も黒板消しを黒板の上で走らせた。
それでも、想いあまって強く書いてしまったのか、書いた跡が少し残ってしまっていた。
それからすぐ、歩く上履きの音は私の教室に入ってきた。
「茉依ー?あ、いた!
ごめん!遅くなって。」
「ううん大丈夫」
どうだった?とはあえて聞かなかった。
きっと帰り道で報告してくれるだろう。
でも———
そんなうれしそうな顔をしていたら、報告なんて待たなくても、結果はわかりきっている。
ちらっと黒板の上の時計を見ると、4時30分をまわっていて、茉胡を送り出してから30分は経っていたことに気づいた。
「帰ろっか。」
「うん。」