キミの隣、笑顔のあなた



「私、いつも佐伯くんのバスケ見てて。
 私、佐伯くんのバスケはすごい好きだから。
 だから、4月に佐伯くんと同じクラスだって知った時、びっくりしたし、うれしかったんだ。
 だから、あの、友達に、なりたい。
 たくさんお話、したい。
 ・・・わがままだけど、ダメかな?」

我ながら、なんてわがままなんだと思う。

振っておいて、これはないだろう、と。

それでも、目の前の佐伯くんは、私の言葉にうれしそうな笑顔でうなずいてくれた。

「うん。いいよ。それで。
 友達に、なってください。」

「・・・こちらこそ、よろしくお願いします。」

「よろしくお願いします。」

すこし、離れている私たちはお互いを向きながらお辞儀をした。

周りから見たら、たぶんすごい変な光景だけど。

私からしたら、佐伯くんと友達になれてすごいうれしい気持ちだった。

佐伯くんが去ってから少し、私はさっき佐伯くんが座っていた、いつもの特等席に腰を下ろした。

優しい人、そう思った。

私は、佐伯くんの想いに応えることはできないけれど。
いつか、佐伯くんが幸せにしたい、佐伯くんが幸せになれると思える女の子に出会ってほしいな、とちゃんと話したのは今日が初めてなのにそう思うくらい、いい人だった。


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