キミの隣、笑顔のあなた



「澄さん、ありがとう。
 たっくさん、ありがとう。」

うちなりの精一杯の笑顔で言えたと思う。

「いいえ。こちらこそ、ありがとう。」

うちたちは笑い合った。


不思議。

ありがとうっていうだけで、さっきまでのいやな気持が嘘のように、心がすーっと気持ちよくなった。

やっぱり、澄さんはすごい。ずるい。

でも、そんな澄さんが大好き。



「じゃ、先車戻ってて。
 何か飲みたいのある?」

「んー、じゃあ、ココア。」

「分かった。」

さっきの一件もあり、朝からずっと一緒っていうのもあってか、もう今ではいつもやり取りしている感じで話すことができている気がする。

山梨から千葉に帰る途中のサービスエリアで夜ご飯を食べた。

澄さんに言われた通り、鍵を預かって先に車に戻ることにした。

さすがに日帰りで同じ学校の生徒に会うわけもなく、あとは家に帰ればいいだけ。

「ああ、さみしいなあ...」

あと少しで千葉についてしまうことが、ちょっぴり、いや、かなりさみしい。

って、こんなわがまま言ってるからまだまだ子供なんだよね!

気合いを入れなおして、車の助手席に乗ると、運転席の足元に何かが落ちていることに気づいた。


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