キミの隣、笑顔のあなた
昔と何も変わらない純粋な茉依に、思わず頬をほころばすと、
「うん。きれいだね。」
佐伯は、茉依を見ながらそう言った。
その言葉に茉依が佐伯を見上げた。
数秒見つめ合った後、茉依は困ったような顔をした。
ズキッ—————————
・・・・・っ。
俺はその場にいたくなくて、思わず早歩きで駅構内へ入った。
電車を待つ間、さっきのことが頭にちらつく。
その度に、俺はイラついていた。
佐伯が茉依のことを見ていた時のあの表情。
なんだかわからないけど、むかつく。
それと同時に、感じた虚しさ。
茉依の佐伯を見たときの、あの困ったような表情。
その表情を見ていたくなかった。
訳の分からないイラツキと、妙な悲しみ。
俺は反対にある二つの感情に心を支配されていた。
この気持ちは一体何なんだろうか。
その日から俺は、なぞのもやもやにずっと悩まされていた。
年が明けてからもこのもやもやはおさまらなかった。
あの日のこと、それから終業式の日のこと。
思い出すだけで、ムカムカした。
このせいで、今年の年越しは、茉依の家に行くことができなかった。
茉依を見ると、抑えが効かなくなりそうだったから。
どんなひどい言葉を茉依に浴びせるのだろうと思おうと、俺は茉依に会うのが怖かった。