夕焼け色の時
失望を浮かべた目が驚きに見開かれるのを見ながら、私は肩ほどの高さにある柵に両手をかけ、ひょいと飛び越えた。
え、と、声を上げて、信じられないものを見た、という表情。
なんだろう、と思ったけれど、その子の隣に立ち、同じ方向を見ると、そんなことはどうでもいいことに思えた。
「……すごいわ」
開けた視界は透明感のある水色と薔薇色に染まり、目の前の町はオレンジ色の光に照らされていた。
右手には、今まさに山々に沈もうとする金色の太陽。
「なんて綺麗なの」
感動に胸打たれる私に、隣から呆れた声がかけられる。
「さっきから見ていたじゃない」
言われてみれば、その子が来るまで私が向いていた方向と、今見ている方向は何も変わらない。
けれど、この素晴らしい景色はさっきまで、私の目には見えていなかった。