夕焼け色の時
「見ていなかったのよ」
不思議そうに私を見るその子に微笑んで、私は答える。
「目の前にあったけれど、私には見えていなかったの」
広々とした空の右端に目を戻すと、太陽はなお眩しく金色の光を放ってゆっくりと沈んでいくところだった。
「おかしいわね。こんなに綺麗な景色なのに……昼間の青空も綺麗だと思うけれど、私はこの景色の方が好きよ。燃え尽きる、その時を知って更に輝く……情熱的だと思わない?」
うっとりと光を見つめる私に、冷めた声がよこされる。
「太陽が変わっているわけじゃない。地球の自転によって、照らされる向きが変わるだけ」
「知っているわ、そんなこと」
夢の無い言葉がおかしく思えて、私は笑った。